スマホ首(ストレートネック)の原因と整形外科での対処法

現代人を悩ませるスマホ首の深刻な実態

現代社会において、スマートフォンやパソコンの普及により、多くの方が 首の痛み や 首こり に悩まされています。特に「スマホ首」や「ストレートネック」と呼ばれる症状は、年齢を問わず急速に増加しており、整形外科を受診される患者さんの中でも非常に多い症状の一つとなっています。
 
最新の統計データによると、現代人の約8割がストレートネックの症状を抱えており、特に20代では56%30代では44.6%の方にストレートネック傾向が見られることが明らかになっています。また、首筋や肩こりを自覚する方は全体の約72.5%にも上り、特に30~40代では75.3%という高い割合を示しています。
 
本記事では、SBC横浜駅前整形外科クリニック院長の川﨑成美が、スマホ首(ストレートネック)の 原因 から 症状、そして整形外科での 治療法 や 対処法予防法 まで、医学的根拠に基づいて詳しく解説いたします。日常生活に支障をきたす前に、正しい知識を身につけて適切な対策を講じることが重要です。
 

スマホ首(ストレートネック)とは何か

医学的定義と正常な首の構造

ストレートネック は、医学的には「頭頚部前方位姿勢」と呼ばれる状態を指します。ストレートネックには医学的に確立された統一的な定義はありませんが、一般的には頚椎の前弯が失われた状態を表現する用語として使用されています。
 
正常な首の骨(頚椎)は、横から見ると緩やかに前方に弯曲しており、この自然なカーブを「生理的前弯」と呼びます。この前弯は、重い頭部(約5~6kg)を支えるために非常に重要な役割を果たしています。正常な脊椎(背骨)は、頚椎の前弯、胸椎の後弯、腰椎の前弯、仙骨の後弯という美しいS字状のカーブを描いており、このバランスによって体重を分散し、各部位への負担を軽減しています。
 
しかし、スマホ首 の状態では、この重要なカーブが失われ、首の骨がまっすぐに近い状態になってしまいます。これにより、頭部の重みが首や肩の筋肉に直接的にかかるようになり、様々な不調を引き起こすことになります。
 

スマホ首の主な症状

スマホ首によって引き起こされる 症状 は多岐にわたり、患者さんによって現れ方も異なります。以下に代表的な症状をまとめました。
 

症状カテゴリー 具体的な症状 発症頻度
首・肩の症状 慢性的な首こり、肩こり、首の痛み 非常に高い
頭部の症状 頭痛、めまい、眼精疲労 高い
神経症状 手のしびれ、腕の痛み 中程度
全身症状 疲労感、集中力低下、睡眠障害 中程度

 
最も多く見られるのは、慢性的な 首の痛み と 首こり です。これらの症状は、首の筋肉が常に緊張状態にあることで生じます。特に、長時間のデスクワークやスマートフォンの使用後に症状が悪化する傾向があります。
 
頭痛も非常に多い症状の一つで、特に後頭部から首にかけての痛みや、こめかみ周辺の緊張型頭痛が特徴的です。これは、首の筋肉の緊張が頭部の血流に影響を与えることで生じると考えられています。
 
さらに進行すると、神経の圧迫により手のしびれや腕の痛みが現れることもあります。これらの症状が現れた場合は、早期の 整形外科受診が重要です。
 

スマホ首の根本的な原因

スマートフォン使用による姿勢の変化

スマホ首 の最大の 原因 は、その名前が示す通り、スマートフォンの長時間使用による姿勢の変化です。スマートフォンを操作する際、多くの方が画面を見下ろすような姿勢を取ります。この時、頭部は正常な位置から前方に突き出し、首は下向きに曲がった状態が続きます。
 
人間の頭部は約5~6kgの重量がありますが、首を前に15度傾けると首にかかる負荷は約12kg30度傾けると約18kg45度傾けると約22kgまで増加することが研究で明らかになっています。つまり、スマートフォンを見る典型的な姿勢では、首に通常の3~4倍もの負荷がかかっていることになります。
 
現代人のスマートフォン使用時間は1日平均3~4時間とも言われており、この長時間にわたる過度な負荷が、頚椎の自然なカーブを徐々に失わせる主要な要因となっています。
 

デスクワークと作業環境の影響

スマートフォンと同様に、パソコンを使用したデスクワークも スマホ首 の重要な 原因 の一つです。特に以下のような作業環境では、首への負担が大きくなります。
 
モニターの位置が低すぎる場合、画面を見るために首を下向きに保つ必要があり、これがストレートネックを促進します。理想的なモニターの位置は、画面の上端が目線の高さかやや下になる位置です。キーボードやマウスの位置も重要で、これらが体から遠すぎると、肩が前に出て首が前方に突き出る姿勢になりやすくなります。
 

生活習慣と環境要因

現代のライフスタイルには、ストレートネック を引き起こしやすい要因が数多く存在します。

読書や勉強の際の姿勢も影響します。机に向かって長時間俯いて作業することで、首の前弯が失われやすくなります。
 
睡眠時の枕の高さも重要な要因です。高すぎる枕を使用すると、睡眠中も首が前方に曲がった状態が続き、朝起きた時の首の痛みや、長期的なストレートネックの進行につながる可能性があります。
 

年齢と性別による影響

統計データを見ると、ストレートネック の発症には年齢と性別による傾向があります。
 
20代では56%と最も高い発症率を示しており、これはスマートフォンやパソコンの使用頻度が高いことと密接に関連していると考えられます。30代では44.6%40代では39.8%と、年齢が上がるにつれて発症率は若干低下しますが、依然として高い水準を維持しています。

興味深いことに、70代以上では再び52.2%と高い数値を示しています。これは、加齢による筋力低下や骨密度の変化が影響していると推測されます。
 

整形外科での診断と治療法

専門的な診断プロセス

整形外科 での ストレートネック の診断は、診察と諸検査によって総合的に行われます。

まず問診で患者さんの症状の経過、日常生活での動作の確認をします。そして首の可動域の確認、筋肉の緊張状態の確認、神経学的検査などを通じて、症状の程度と影響範囲を評価します。特に、首を前後左右に動かした際の痛みや制限、肩や腕への症状の放散などは重篤な症状につながることがあるため慎重に確認します。
 
画像検査は、主にレントゲン撮影を行います。レントゲンにより、頚椎の配列や前弯の程度を客観的に評価することができます。必要に応じて、MRI検査を実施することもあります。MRIでは、椎間板の状態や神経の圧迫の有無、軟部組織の変化などをより詳細に評価することができ、他の疾患との区別をつけるためにも有用です。
 

整形外科での治療選択肢

整形外科 での ストレートネック の 治療法 は、症状の程度や患者さんの生活状況に応じて、以下のような選択肢から最適なものを選択します。

治療法 適応 期間 効果
理学療法 全ての段階 継続的 根本的改善
薬物療法 痛みが強い場合 症状に応じて 症状緩和
注射療法 保存療法無効時 必要時 炎症抑制
手術療法 重篤な神経症状 根本的治療

 

リハビリテーション・理学療法

理学療法 は、ストレートネックの根本的な改善を目指す重要な治療法です。専門の理学療法士による指導のもと、運動療法を実施します。

頚椎の可動域を改善するためのストレッチング、首や肩周りの筋力強化エクササイズ、正しい姿勢を維持するための体幹筋トレーニングなどを組み合わせて行います。
 

薬物療法

痛みや炎症が強い場合には、薬物療法を併用します。非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)による痛みと炎症の抑制、筋弛緩薬による筋肉の緊張緩和、必要に応じてビタミンB12などの神経栄養薬の投与を行います。

これらの薬物は症状の緩和には効果的ですが、根本的な原因 の解決にはならないため、他の治療法と組み合わせて使用することが重要です。

その他 手術や注射なども考慮されます。必要に応じて横浜市内の関連病院をご紹介いたします。より負担の少ない治療で効果が得るには早期介入が重要です。
 

自宅でできる対処法と予防策

日常生活での姿勢改善

予防法 として最も重要なのは、日常生活での姿勢の改善です。以下のポイントを意識することで、スマホ首の進行を防ぐことができます。
 

スマートフォン使用時の注意点

スマートフォンを使用する際は、画面を目線の高さに近づけることが重要です。肘を90度に曲げ、スマートフォンを顔の前に持ち上げるようにします。長時間の使用は避け、数十分に1回は休憩を取り、首や肩を動かすようにします。
 

デスクワーク環境の最適化

モニターの上端が目線の高さかやや下になるよう調整します。椅子の高さは、足裏全体が床につき、膝が90度になる位置に設定します。キーボードとマウスは体に近い位置に配置し、肩がリラックスした状態で操作できるようにします。
 

セルフチェック方法

自宅で簡単にできる ストレートネック のセルフチェック方法をご紹介します。

壁を背にして、気をつけの姿勢で立ちます。正常な場合、後頭部、肩甲骨、臀部、踵の4か所が自然に壁につきます。ストレートネック の場合、後頭部が壁につかない、または意識的に押し付けないとつかない状態になります。

このチェックで異常を感じた場合は、早めに 整形外科 を受診することをお勧めします。
 

まとめ

スマホ首ストレートネック)は、現代社会において急速に増加している症状で、適切な理解と 対処法 により改善が可能です。
 
整形外科での治療法には、理学療法、薬物療法などがあり、患者さんの症状に応じて最適な治療を選択します。早期の診断と適切な治療により、多くの場合で症状の改善が期待できます。
 
予防法 としては、日常生活での姿勢改善、定期的なストレッチ、作業環境の最適化が重要です。特に、スマートフォンやパソコンの使用方法を見直し、数十分に1回の休憩を心がけることが効果的です。

スマホ首 は放置すると症状が進行し、日常生活に大きな支障をきたす可能性があります。セルフチェックで異常を感じた場合や、首の痛み が続く場合は、 早めに整形外科を受診することをお勧めします。
 
SBC横浜駅前整形外科クリニック では、ストレートネック をはじめとする首の疾患の診断・治療 を専門的に行っています。経験豊富な整形外科専門医が、患者さん一人ひとりの症状に応じた最適な治療を提供いたします。スマホ首 でお悩みの方は、ぜひ専門医にご相談ください。
 

よくある質問

Q1: スマホ首は完全に治りますか?

ストレートネック は、適切な 治療法 と生活習慣の改善により、症状の大幅な改善が期待できます。ただし、完全に元の状態に戻るかどうかは、症状の程度や期間、患者さんの年齢などによって異なります。重要なのは、早期に適切な対処を行うことです。軽度の場合は、姿勢の改善とストレッチにより、数ヶ月で症状が大きく改善することも多くあります。
 

Q2: 手術が必要になることはありますか?

スマホ首で手術が必要になることは非常に稀 です。ほとんどの場合、保存療法や理学療法などの非手術的な治療で症状の改善が可能です。手術が検討されるのは、重篤な神経症状(手の麻痺や強いしびれ)が持続し、改善しない場合に限られます。早期に適切な対処を行うことで、手術を避けることができる可能性が高くなります。
 

参考情報

監修医師

SBC横浜駅前整形外科クリニック

院長川﨑 成美 Narumi Kawasaki