脊髄の痛み・障害(体幹の症状)

ロコモティブシンドローム

ロコモティブシンドロームとは

日本では高齢社会を迎え、平均寿命は約80歳となっています。
それに伴い、運動器の障害も増加傾向にあります。50代からは入院での治療が必要となる運動器障害が現れやすく、多くの人は運動器を健康に保つことが難しいことだとわかります。

日本整形外科学会では、「ロコモティブシンドローム(locomotive syndrome)」と提唱し、運動器の障害により移動機能が低下した状態を指します。
運動器は健康の根幹であるという考えで、年齢を重ねることに否定的なニュアンスを持ち込まないことが大切だという意味でこの言葉が生まれました。

「ロコチェック(ロコモーションチェック)」と、ロコモティブシンドローム対策の運動「ロコトレ(ロコモーショントレーニング)」のパンフレットが作成されており、自身で気づくためのツールとして用いられています。

ロコモティブシンドロームについて医師が解説

ロコモティブシンドロームが進行すると、社会参加・生活活動が制限されて、最終的には要介護状態にまで至ってしまいます。
ロコモティブシンドロームは回復可能です。
筋力が衰えないようにバランストレーニングや毎日の食事を意識して生活しましょう。

側弯症

症状

背骨が左右に湾曲して背骨自体のねじれを伴う状態を「側弯症(そくわんしょう)」と言います。
主な症状は左右の肩の高さが非対称になる、肩甲骨の突き出しが起きる、腰の高さが異なる、胸郭の変形、肋骨や腰部の隆起などが挙げられます。
症状が進行すると腰背部の痛みや心肺機能の低下が起こります。

女の子によく見られ、発生頻度は1〜2%程度と言われています。側弯症の中でも原因不明のものを特発性側弯症と呼び、全体の6〜7割を占めています。
他にも先天的な側弯の異常を先天性側弯症、神経や筋の異常により発症するものを症候性側弯症と言います。

診断方法

診察方法は子供に前傾姿勢の状態をとらせ、後ろから脊柱を観察します。
症候性側弯症の判別を行うためには神経学的検査やMRIを用いた検査が有効です。短期間で症状が悪化する場合は、年に数回の診察が必要となります。
レントゲンで撮影した脊柱全体の写真をもとに側弯の症状を角度で表し、それと同時に脊椎骨や肋骨に異常がないかを確認します。

予防と治療

側弯症は学校検診でも実施されており、弯曲が進行する前に診断を行い、適切な治療を始めることが大切だからです。

治療は症状の原因、進行状況、年齢により異なります。特発性で症状が軽い場合は経過観察を行いますが、症状が進行してしまっている場合は治療用装具を用いた治療を行います。
特に脊椎が成長する思春期に悪化しやすいので、症状の進行状況によっては矯正のための手術が必要となる場合があります。

他にも先天性や症候性のもので、症状の悪化が懸念される場合は手術での治療が必要と判断されることもあります。

側弯症について医師が解説

多くの場合は女性、特に思春期に多く、成長に伴い背骨が曲がっていきますが、気が付かないことも多いです。
側弯が強いと背中や腰の痛みを引き起こしたり、内臓が圧迫され呼吸器や消化器などに異常をきたす事も考えられます。

脊髄腫瘍

脊柱管内には髄液を満たしている硬膜というものがあります。
硬膜の外側にある腫瘍を硬膜外腫瘍、内側にある腫瘍を硬膜内腫瘍と言います。また、硬膜内腫瘍の中で、脊髄外部にできる腫瘍を髄外腫瘍、内部にできる腫瘍を髄内腫瘍と言います。

硬膜外腫瘍は転移性のものと原発性のものがありますが、多くの場合は転移性のものです。硬膜内腫瘍のほとんどは良性腫瘍で髄外腫瘍が多く見受けられます。硬膜内髄内腫瘍は稀ですが、治療が難航するものが少なくありません。

診断方法

脊髄腫瘍はレントゲンで見つけることができないので、X線像が正常かつ、MRI検査で脊髄腫瘍が確認できた場合、診断されます。腫瘍の種類、広がりを確認するために、造影MRIが行われるケースがあります。
手術を視野に入れている場合はCT検査を追加する場合が多いと思われます。

予防と治療

治療では、腫瘍を取り除く手術を行います。腫瘍によっては、放射線照射、化学療法が必要に応じて追加される場合があります。症状が軽い、進みが遅い、高齢者、などは様子を見ることがあります。

転移性脊椎腫瘍

転移性脊椎腫瘍とは、他の臓器にできた癌が脊椎に転移し、骨を破壊して神経を圧迫し、痛みや麻痺を引き起こす疾患です。
癌細胞が脊椎の骨に流れ込み、そこで癌細胞が繁殖することによって骨を破壊します。骨を破壊されたことにより、脊椎が支えられなくなると最終的に骨折に至ります。骨折によって生じた骨片や腫瘍の膨らみにより脊髄が圧迫されると今度は麻痺が引き起こされます。

診断方法

レントゲンでの骨の損壊具合(融解・骨折)、MRI検査での腫瘍病変によって診断を行います。他の骨に転移していないかどうか、それを調べるために骨シンチグラフィーにて検査します。また、病的骨折のリスクを確認する場合、CT検査を実施します。

治療

要因となる癌に対し、化学療法・ホルモン療法を行うのが基本です。骨融解型から骨硬化型へ薬剤を用いて変化させます。局所的な場合、腫瘍が肥大化したことによって症状が出ている場合には、放射線照射を行います。放射線照射や化学療法は骨破壊が進んで脊柱の支持性が無くなってきた場合無効なため、脊椎固定術といった手術を要します。

転移性脊椎腫瘍は、全身と局所のバランスを取りながら、癌の種類や病気の進行具合など症例ごとに最適な治療方法を選択しなければなりません。どの治療が適しているとは一概には言えないため、症例ごとにあった治療法を検討し、治療を行なっています。

脊髄損傷

脊髄損傷とは、脊椎の脱臼や骨折により、脊髄が圧迫されることで起こります。完全麻痺と不全麻痺があり、損傷された脊髄から遠位の運動・知覚の障害が起こります。完全麻痺は、下肢が全く動かず、感覚が失われます。

診断方法

麻痺の症状があり、MRIやレントゲンで脊椎・脊髄の損傷部位が明らかになれば診断されます。

予防と治療

損傷した脊椎を動かさないようにし、損傷が広がらないようにします。四肢が動かない頚髄損傷は、頭部と体幹を一体として固定し、病院へ搬送します。

受傷直後は脊髄ショックの状態で、完全麻痺と不全麻痺の区別が付きません。しかし、脊髄ショックを脱した後に完全麻痺であれば一般的に予後は期待できません。
治療は不安定性のある損傷脊椎の固定となります。不全麻痺で脊髄圧迫が残っている場合には、圧迫を取り除く手術を行います。

麻痺が残っている場合には、残っている機能を使用して日常生活でできることを増やすため、リハビリテーションを行う必要があります。

後縦靱帯骨化症・黄色靱帯骨化症

背骨の動きが悪くなるため、体が硬い、背筋(せすじ)にこりや痛みを生じる場合があります。
しかし、このような症状は病気でない場合でも起こるため、症状だけでは判断ができません。
注意が必要な症状は、神経(特に脊髄)が圧迫されて神経の働きが低下して起こる脊髄症状です。

後縦靭帯骨化症で頚椎の脊髄が圧迫されると、ビリビリ、ジンジンしたり感覚が鈍くなる手足のしびれ感や、手指の細かい運動がぎこちなくなり、箸が上手く使えない、ボタンを掛けたり外したりすることが上手くできないなどの症状が現れます。他にも突っ張ってつまずきやすい、階段の登り降りが困難など、歩行障害が起きることもあります。

黄色靭帯骨化症でも同様の症状が現れますが、骨化してくる部位が胸椎に多いため、その際は足の症状のみとなり手の症状は出ません。

原因と病態

背骨の骨と骨の間には靭帯があり、脊髄の周りが補強されています。
首の前側から順に、椎体と呼ばれる骨と後縦靭帯が存在し、脊髄を挟んで黄色靭帯、その後方(背中側)に椎弓と呼ばれる骨が存在しています。靭帯はそれぞれの骨に適度な動きと安定性をもたらす役割を持っています。
後縦靭帯は脊髄の前方にあり、黄色靭帯は脊髄の後方に位置するため、それぞれの靭帯が分厚くなって骨のように硬くなってしまうと脊髄が圧迫されて脊髄症状が現れます。
後縦靭帯側での症状は後縦靭帯骨化症と言い胸椎にも現れますが頚椎に多い病気です。黄色靭帯側は黄色靭帯骨化症と言い胸椎に多い病気です。

診断方法

頚椎に多い後縦靭帯骨化症は通常のレントゲン検査で見つけることができます。しかし、胸椎に多い黄色靭帯骨化症は通常のレントゲン検査では診断が困難なことが多いです。

通常のレントゲン検査で診断が困難な場合は、CT検査やMRI(磁気共鳴撮像検査)などでの精密検査が必要になります。CT検査は骨化の範囲や大きさを判断するのに有用で、MRIは脊髄の圧迫程度を判断するのに有用です。

予防と治療

完全に予防することは難しいですが、症状の悪化を防ぐために日常生活では以下の点に注意が必要です。

頚椎後縦靭帯骨化症は、首を後ろに反らせすぎないこと、転倒・転落することで脊髄症状が出現したり悪化したりすることがあるので注意が必要です。

脊髄症状のため日常生活に支障があり、脊髄に圧迫がある程度あれば手術が必要になります。頚椎の後縦靭帯骨化症に対する手術法には、首の前を切開する前方法と後ろ側を切開する後方法があり、それぞれにメリット・デメリットが存在します。

胸椎の黄色靭帯骨化症に対しては、背中側の椎弓を切除、もしくは形成することにより脊髄の圧迫を解除する手術法が一般的です。

後縦靭帯骨化症について医師が解説

発症するのは中年以降、特に50歳前後で発症することが多く、男女比では2:1と男性に多く見られます。また、糖尿病の患者さんや肥満の患者さんに後縦靱帯骨化症の発生頻度が高いことがわかっています。
すべての患者さんにおいて症状が悪化するわけではなく、半数以上の方は数年経過しても症状が変化しません。ただし、一部の患者様は、段々と神経障害が悪化し、進行性の場合は手術を要することもあります。また、軽い外傷、たとえば転倒などをきっかけに急に手足が動かしづらくなったり、今までの症状が強くなったりする場合もあります。

しびれ(脊椎手術後のしびれ)

しびれ(脊椎手術後のしびれ)とは、しびれや痛みを取るために脊椎の手術を行いますが、脊髄や馬尾神経、神経根の圧迫が手術により無くなっているにも関わらず、しびれが残る場合があり、これらのことを指します。

原因と病態

脊椎の手術を行う場合には、一定期間脊髄や神経根の圧迫が続いている場合がほとんどです。
手術により神経の圧迫を取り除くことはできますが、手術で神経そのものに対しての治療は行えません。長期間にわたり圧迫されていた神経は変化が生じている場合があり、圧迫を取り除いても神経の障害が治らないことがしびれの残る原因です。

神経を圧迫している骨を削る操作が必要な手術では、神経を守るためにヘラを当てたり、神経を横へ避けたりすることが必要になります。
神経にとって、圧迫することや引っ張ることになるので、脊椎の手術では必ず神経に対して圧迫や牽引が生じることになります。もちろん手術は短時間なので、これによる神経の障害は回復しやすいのが一般的ですが、障害が残るケースもあります。

診断方法

手術後に神経に対する新たな圧迫が起きていないかCT検査、MRI、造影検査などで確認します。

神経に対する圧迫がなければ、上記のような原因でのしびれと考えられるため、ある程度しびれの残存に慣れることが必要になります。

脊椎手術後のしびれについて医師が解説

一般に神経障害を伴う病気では手術で神経を圧迫しているものを取り除いても、神経が障害を受ける以前の状態まで戻ることはありません。手術の目的の一番大事なことは、現在、神経に障害を与えているものを取り除き、神経がこれ以上傷害されないように予防することが大切です。圧迫を解除された神経に自己修復する能力が残っていれば、症状は軽減しますが、術後にどのくらい症状が改善するかは予測ができません。傷害された神経が回復できない部分が後遺症として残ります。一般的には術後に痛みは比較的取れやすいのですが、しびれや運動機能低下は治りにくいとされています。

脊椎椎体骨折

脊椎椎体骨折の原因は様々で、転移性骨腫瘍による病的椎体骨折、強い外力により生じる外傷性椎体骨折、骨粗鬆症が原因で比較的弱い外力によっても生じるものもあり、圧迫骨折と呼ばれることもあります。
ご高齢の方に起こるものでは、胸椎と腰椎の移行部あたりの椎体に生じ、ほとんどが骨粗鬆症に起因しているので、転んだりした際の軽微な外力により生じます。

症状

骨粗鬆症により骨が弱くなっている場合は、胸腰移行部に生じることが多く痛みが軽度の場合もあります。しかし、尻もちなどで明らかに外力が加わった場合、通常ですと骨折のある部位の疼痛を伴います。いくつもの場所に多発性に椎体骨折が生じると背中が丸くなり身長が低くなります。

腫瘍などの転移によるものは、骨折部の体動時の痛みのほかに安静時にも痛みが生じます。強い外力により生じた場合は、他の骨軟部損傷を伴うことも多く、脊髄損傷を生じる場合もあります。部位によりますが胸腰移行部に生じた場合、重症では両下肢麻痺を生じる可能性もあり様々な症状が現れます。

原因と病態

骨粗鬆症が原因で生じた場合、中腰や重いものを持つなど胸腰移行部に力が集中して骨折することがあります。
外力でも力が集中したところの椎体の前方が潰れてくさび形になります。

腫瘍などの転移による場合、腫瘍が転移した部が弱くなって弱い外力で骨折します。強い外力により生じた場合は、椎体前方だけで済む場合もありますが、脊椎椎体が後方要素を含め、全体につぶれて不安定になり、脊髄の通り道である脊柱管に及び、脊髄の麻痺を生じるケースがあります。これを脊髄損傷と言います。

診断方法

レントゲン検査を行うことで判定されます。椎体骨折部の粉砕や脊髄損傷のある際には、CT検査やMRI検査を要します。
骨粗鬆症が疑われる場合には、骨密度を測定します。
転移性骨腫瘍が疑われる際には、MRI検査や骨シンチグラフィーなどの検査を追加で実施します。

予防と治療

骨粗鬆症によって引き起こされる軽度の圧迫骨折の場合は、簡易コルセットなどで外固定をして、前屈を禁止して安静にします。
安静にすることで3~4週間ほどでほとんどが治ります。

強い外力が原因の場合、ギプスや装具などの外固定で早期に離床して歩行訓練を行います。圧迫骨折が高度であったり、骨折部の不安定性が強かったり、脊柱管がすれたり骨片で圧迫を受けている場合や、長く疼痛が残るものは、手術が必要になることがあります。

脊椎椎体骨折について医師が解説

治療の基本は保存治療になります。
受傷後1ヶ月の間、骨折部は不安定で容易に変形しますので特に注意が必要です。硬めのコルセットを使用し、骨折の程度によってはギプスを身体に巻いたりします。これによって、痛みを軽くし、変形の進行をできるだけ防ぎます。それでも痛みは骨折が治る頃まで続きますので、寝たり起きたりする回数はあまり多くしない方がよいと思われます。また、畳の上よりむしろ立ち上がりやすいベッドでの生活を勧めています。早い人でも受傷後2週間から、多くの人では3~4週間で骨が形成されてきます。
脊椎椎体骨折の背景に骨粗鬆症が隠れていることがあり、ホルモンバランスが崩れる閉経後の女性に特に多いですので、骨密度検査をお勧めします。骨粗鬆症は、他にも年齢や運動・喫煙などの生活習慣に関わりがあります。

変形性脊椎症

加齢によって起きる軽症な場合、無症状のことも多く病的とは言えないケースもあります。
通常ですと椎間板と後方の左右一対の椎間関節によって脊柱の動きが可能になっていますが、これらが退行変性した状態を変形性脊椎症と言います。椎間板が変性するとその異常な動きを止めるように骨棘が形成されます。

症状

無症状のことも多いですが、変形が進んで高度になると慢性の疼痛や可動域制限が生じて、稀に神経根症状を生じます。
また、脊柱管が狭窄化し脊柱管狭窄症となって症状が現れます。

原因と病態

変形が進んで高度になると、椎間板の変性も生じるので椎間が狭小化して、後方関節の変形性関節症変化が生じ、慢性の疼痛が生じるようになります。
椎体上下縁に骨棘形成が著明になって、椎体間の架橋形成も生じることもあります。

稀に神経根を圧迫して神経根症状を生じる場合や、変形による骨棘や肥厚などにより脊髄や馬尾神経の通り道が狭くなり脊柱管狭窄症となって症状が現れる場合もあります。

診断方法

レントゲン検査を行います。脊柱管狭窄症や神経根症状の強い場合はMRI検査を要します。

予防と治療

無症状の場合、治療の必要はありません。
痛みがある方に対しては、コルセットなどでの安静、薬物療法、腰痛体操などを含めた理学療法を行います。
神経根症状や脊柱管狭窄症の症状があれば、それらの治療を実施します。

小児の脊柱側弯症

症状

脊椎が柱状に繋がった状態を脊柱と言います。ヒトの脊柱は7個の頚椎、12個の胸椎、5個の腰椎、仙骨、尾骨で成り立っています。
正常の脊柱は前あるいは後ろから見ると、ほとんど真っ直ぐですが、側弯症では脊柱が側方に曲がり、多くの場合は脊柱自体のねじれを伴います。

側弯症が進行すると側弯変形による心理的ストレスの原因や腰痛や背部痛、肺活量の低下などの呼吸機能障害、稀に神経障害を伴う場合があります。

原因と病態

脊柱側弯症は機能性側弯と構築性側弯に大別され、原因が明らかなものから、現代でも不明なものがあります。
機能性側弯は、疼痛、姿勢、下肢長差などの原因による一時的な側弯状態です。弯曲は軽度で捻れを伴わず、原因を除去することにより側弯は消失します。
構築性側弯は、脊椎のねじれを伴った脊柱の側方への弯曲で、正常の状態に戻らなくなった状態を言います。原因が明らかな側弯症と、未だ原因が分かっていない側弯症があります。

側湾症の種類としては、以下のようなものがあります。

  • 特発性側弯症

  • 先天性側弯症

  • 神経原性側弯症

  • 神経原性側弯症

  • 筋原性側弯症

  • 間葉系疾患による側弯症

  • その他の側弯症

特発性側弯症は、脊柱側弯症のうち80%前後を占めますが、その原因はわかっていません。家族内発生が多いことから遺伝が関与している可能性が考えられています。 発症年齢により、3歳以前に発症する乳幼児期側弯症、4歳から9歳に発症する学童期側弯症、10歳以降に発症する思春期側弯症に分類され、それぞれに特徴があります。

乳幼児期側弯症には自然治癒する傾向にあるものと、強い進行を有するものがあります。最も高率に見られる思春期側弯症は女性に多く、側弯の型も共通性があります。特発性側弯症が進行するかを予測することは難しいですが、年齢や弯曲の型、程度などが参考になります。一般的には、年齢が若く、女性では初潮前や骨の成熟が未熟な例は進行しやすいとの見解があります。

先天性側弯症は、脊椎などに生まれつきの形の異常があることで、成長期に左右の成長に差が出ることから側弯症に進展します。泌尿器系や心臓などの他の多臓器にわたり生まれつきの異常があることが少なくありません。

神経原性側弯症は、神経が障害されたことにより、背中や横腹の筋肉が麻痺したことで脊柱を支える力が失われて曲がってきたものです。

筋原性側弯症は、筋肉が萎縮する病気で、筋ジストロフィーなどの筋肉の病気による側弯症です。

間葉系疾患による側弯症は、エーラス・ダンロス症候群、マルファン症候群など血管や結合組織の生まれつきの病気による側弯症です。

その他の側弯症としては、小児期の病気や外傷後の脊髄麻痺後や放射線治療後、火傷などのケロイド、くる病などの代謝疾患などの様々な原因があります。

診断方法

側弯症を診断するためには、医師によるレントゲン検査を要します。
また、医師でなくても注意すれば簡単な方法で側弯症を疑うことが可能です。日常生活の中で、入浴しながら背中を流して気づくケースや、洋服を着せる時に両肩や背中のラインが合わない、スカートの丈が左右で異なるなど注意することで気づく場合もあります。
立位検査や前屈検査で体型が左右非対称であることから発見することができます。

立位検査

真っ直ぐ立った状態で以下を確認します。

  • 肩の高さに左右差があるか

  • 肩甲骨の高さと突出の程度に左右差があるか

  • 腰の脇線が左右非対称であるか

前屈検査

両方の手のひらを合わせて、肩の力を抜き両腕を自然に垂らします。膝を伸ばしたままでゆっくりお辞儀をさせ以下の項目を確認します。

  • 肋骨や腰に左右のいずれかにもりあがりがあるか

  • 左右の高さに差があるかどうか

  • 腰の脇線が左右非対称であるか

側弯症が疑われたら、立位での脊柱のレントゲン検査をします。
レントゲン検査の結果で機能性側弯や治療を必要としない程度の構築性側弯症と診断されても、それが進行するかどうか注意して経過観察が必要です。

予防と治療

治療は側弯の角度、年齢、骨成熟度により決定します。 治療法は以下の3つがあります。
運動療法やマッサージ、カイロプラクティックなどは小児の脊柱側弯症に対する矯正効果がなく有効性は科学的に確認されておりません。

  • 経過観察

  • 装具治療

  • 手術療法

●経過観察

経過観察の場合、成長期で、側弯が20~25°以下の軽い側弯に対しては、進行するかどうか判定できないために3~6ヶ月ごとの専門医による定期的な診察を受けることが好ましいです。

●装具治療

装具治療の場合、側弯が25~40°までの軽症あるいは中等度の側弯症に対しては、側弯の進行防止、矯正および状態保持のために装具療法が行われます。装具療法の目的は側弯の進行防止のため、弯曲した脊柱を真っ直ぐな状態に戻すことではありません。 装具で側弯を矯正しながら成長させ、手術に至らせないことであり、骨成熟が終了したら装具を外します。 その他の目的として、手術までの待機期間に装具療法が行われることもあります。装具療法は側弯の部位、程度や原因、治療効果などを考えて行われるため、必ず専門医の指示に従い正しく装着して下さい。
骨成熟終了時に側弯が30~35°以下であれば成人後も特に問題ありませんが、35°以上であると年齢とともに進行して将来手術が必要になることもあります。

●手術療法

手術では曲がった脊柱を矯正して、元に戻らないように固定する方法が行われます。背中から行う後方法と、体の横から行う前方法があり、患者様の年齢、側弯の部位、大きさ、タイプなどを考慮して、どちらかもしくは両者が行われます。 合併症には神経麻痺、感染、呼吸器合併症などの他にもいろいろな合併症を生じる可能性がありますが、頻度は高くありません。神経麻痺を防ぐために、手術中に脊髄機能をモニタリングしながら安全に手術が行われるように対策がとられています。

輸血は必要ですが、現在、自己血輸血が確立されているので、手術前に患者様自身の血液を貯血して、手術中は出血した血液を回収する自己血回収装置を用いて患者様に戻す方法がとられています。そのため、家族や他人の血液を輸血することなく安全に手術を終えることが可能です。
手術方法により異なりますが、手術器具の進歩により手術後1週以内に装具を装着することなく歩行ができ、2~3週以内で退院となり、翌日から通学も可能となります。

強直性脊椎炎

強直性脊椎炎とは、腰痛・仙腸関節痛や坐骨神経痛、肋間神経痛、時に股・膝・足関節などの痛みや腫れで発症する病気です。 なりやすい方としては、若年者の特に男性に多く、女性の2~3倍を占めています。痛む場所は移動することが多く、安静にしているよりも体を動かした方が痛みが軽くなるのが特徴です。

特徴的な徴候を示さない初期には病状の波が激しいので、痛みで寝込んでいたかと思うと翌日には元通りになることも多々あります。医者に行っても診断されないため、周囲から誤解を招き、悩む患者様も少なくありません。

病状の進行により、頸椎も含めて脊椎の動きが悪くなり体が前傾気味となるので、体を反らす、上を見上げる、うがいをするといった動作に支障が出てきます。

重症例では初発から10~20年経過すると脊椎が動かなくなり、日常生活や就労に不自由を感じるようになりますが、全員がそうなる訳ではなく、重症化する方は患者様の1~2割程度となります。多くの方は多少の支障はあっても通常の生活を送れます。
合併症として目の病気である虹彩炎、腸の病気であるクローン病、潰瘍性大腸炎、皮膚の病気の乾癬、掌蹠膿疱症などが挙げられます。

診断方法

年齢が若く、特に朝起きてからすぐに全身のこわばりや疲労感、繰り返す腰痛や原因不明の手足の関節炎のある場合にはこの疾患が疑われます。血液検査(血沈やCRPなどの炎症反応、HLA-B27)やレントゲン検査(仙腸関節炎像、脊椎椎体間の靭帯骨化像など)を行って診断します。
MRI検査は、レントゲン検査で異常が出る前の段階でも炎症像が見られるので早期診断には有効です。

予防と治療

遺伝的要因が関与していることはわかっていますが、未だ原因がわかっていないので予防法は存在していません。
根治療法もないので、病気をよく理解して症状の把握を行った上で炎症や痛みを抑えながら積極的に体を動かすことが主になります。それによって不良肢位(脊椎前屈など)での強直を抑制・防止、あるいは遅らせることができます。

炎症を抑える方法としては、消炎鎮痛剤や抗リウマチ薬があり、いずれも長期間の使用が必要となります。病状、年齢、社会的背景など考慮し、有効で必要最低限の量を調整して使用していきます。

関節リウマチなどに効果をあげている生物学的製剤も有効であることがわかってきました。
その他、種々の温熱療法、マッサージや漢方など、痛みが楽になるのであれば試してみても良いでしょう。
※猛撃矯正療法は避けてください。

日頃から積極的に運動を心がけて社会活動を行うことが症状の軽減や機能の維持に繋がります。コルセットの有効性は少なく、体動不能なほどに痛みが強い場合や発熱時など以外は特に安静にする必要もありません。 股関節や膝関節の痛みが激しく、動きも悪くなって歩行や日常生活に強い支障をきたすようになった際は、人工関節全置換手術が行われて、再び歩行が可能となり社会復帰ができます。

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