腕を枕にするなど、腕が圧迫された姿勢のまま寝てしまったり、深い切り傷や骨折などの外傷が原因で上腕に麻痺が生じる症状です。原因がはっきりしないこともあります。
手の甲や親指と人差し指の間に強いしびれが現れたり、手首が垂れ下がり、反らしたり手指を伸ばしたりすることができない状態(下垂手)になる場合もあります。
上腕中央部での傷害では、親指・人差し指・中指の伸ばす側を含む手の甲から前腕の親指側の感覚に障害が生じ、下垂手になってしまいます。 一方、肘の折れ曲がる時の後骨間神経の傷害では、下垂指になり、感覚の障害は起こりません。 前腕から手首にかけての親指側がケガなどで傷害を受けるとケガの部位によって様々な感覚の障害が生じます。前腕から手背の親指側、人差し指・中指の背側に感覚の障害が生じますが、下垂手にはなりません。
下垂手の症状があるか、どの部位にしびれや感覚障害があるかなどを診察します。必要に応じて筋電図検査、レントゲン検査、MRI検査、超音波検査などを行なっております。
しびれのある体勢を取らないなどで安静にすることで数週間~2ヶ月程度で回復するといわれますが、圧迫が原因ではない場合(骨折や脱臼などの外傷、腫瘤による神経の圧迫)は手術が必要になることもあります。必要に応じて内服や装具を用いたり、運動療法などを行っていきます。
外傷や腫瘍によって尺骨神経(上腕から前腕にかけて内側に走る神経)が阻害されると、お箸を持ったりボタンをかけるといった細かな動作がうまくできなくなる症状です。
しびれや痛みが生じたり、筋肉の萎縮によってかぎ爪のような手の形(かぎ爪変形)になることもあります。
筋萎縮によるかぎ爪変形が認められるかの診察や、「Froment(フローマン)サイン」と呼ばれる検査を行います。
Fromentサインとは
両手の親指と人差し指で一枚の紙をつまんだ状態で紙を引っ張り、麻痺している側の親指が曲がるかどうかを確かめます
必要に応じて筋電図検査、レントゲン検査、MRI検査、超音波検査などで検査します。
骨折や脱臼などの外傷、腫瘤による神経の圧迫が原因の場合は手術が必要になることもあります。
患部を安静にしたり、内服薬や運動療法などを行っていきます。
正中神経は手の中でも最も重要な神経といわれ、手指の感覚と繊細な動きを担っています。
外傷や腫瘍・神経炎や、細かい手作業のしすぎなどによって正中神経が圧迫されると、小指以外の指にしびれや痛みが出たり、曲げ伸ばしがしづらくなります。
肩から腕にかけての痛みやしびれの範囲や痛みの出る動作などを診察し、「涙のしずくサイン」と呼ばれる検査を行います。
涙のしずくサインとは
親指と人差し指の先をくっつけてOKサインを作った時に、麻痺の影響で綺麗な丸の形が作れず、雫の形になっているかどうかを検査します。
必要に応じて筋電図検査、レントゲン検査、MRI検査、超音波検査などで検査します。
患部を安静に保ち、内服薬や運動療法などを行っていきます。 骨折や脱臼などの外傷や、腫瘤による神経の圧迫が原因の場合、手術が必要になることもあります。
上腕のしびれは、神経の圧迫や損傷によって生じることがあり、手をよく使う仕事や長時間同じ姿勢をとってしまった場合や、事故や怪我による外傷が原因の場合など、様々な理由で起こります。
正座などの血行不良が原因で起こる一過性の場合は心配はありませんが、思わぬ病気が隠れていることもあるため、まずは放置せず整形外科医へご相談ください。
上肢にしびれが生じた場合、どんなしびれなのか(チクチク感・ビリビリするなど)発症してからどのくらい続いているのか、部位や範囲、他の部位のしびれの有無などで病気や症状を特定することができます。
どの神経にしびれや麻痺が生じているのかを自分で判定する方法をご紹介いたします。
●手首を直角に曲げ、両手の手の甲同士をつけた形を1分間キープします。その間に普段の痺れが強くなる場合、手根管症候群の可能性があります。
●肘の内側を軽く叩くと小指に響くような痛みや痺れがあらわれる場合、肘部管症候群の可能性があります。
●手首の曲げ伸ばしができない場合、橈骨神経麻痺の可能性があります。
また、片側の手足がしびれる場合や、上肢だけでなく口の周りがしびれる場合などは脳腫瘍や脳血管障害などの頭の中の病気の場合もあります。
いずれの場合でも、まずは整形外科にご相談ください。
前骨間神経麻痺や後骨間神経麻痺は神経炎が主な原因で、ほかにも外傷、絞扼性神経障害でも起こります。
近年、神経炎が原因で腫れが起こり、末梢神経の一部が「砂時計のくびれ」のような形になり、ちぎれそうな状態になる症例が話題となりました。
感覚障害がなく運動神経が障害される神経の症状と間違えられることもあるため、詳しくは整形外科医にご相談ください。
レントゲン検査やMRI検査などを行います。 神経炎の場合、肘周りに痛みが出たり、肘が伸ばしづらい状態が3〜7日ほどで消え、その後麻痺が生じることに気づきます。
前骨間神経麻痺は「涙のしずくサイン」と感覚障害がないことで診断され、後骨間神経麻痺は「下垂手」と呼ばれる手指の付け根が伸ばせなくなり、指が下がる症状と、感覚障害がないことで診断されます。
神経炎など原因が不明なものや回復の可能性のある場合は保存治療を行います。
神経炎はほとんどの場合回復しますが、改善されないこともあります。 神経のくびれがはっきり確認できる場合、3~6ヶ月ほど経過観察し、回復が見られない場合は手術を行うこともあります。